ロイター記事  「リスクオン」 13.01.10

■日本起点のリスクオン相場、日銀緩和期待が流動性拡大の思惑呼ぶ
2013年 01月 10日 14:11 JST  
 
[東京 10日 ロイター] イベントを控え市場には様子見気分も漂うが、日本を起点としたリスクオン相場は継続している。調整は小幅にとどまり、円安と株高トレンドが再開。日銀による大胆な金融緩和への期待が流動性拡大の思惑を呼び、世界の株価を押し上げるとの期待は根強い。
短期的な過熱感はまだ残り、上値もやや重さを増しているが、改善を示すマクロ指標もあり、強気ムードは途切れていない。
 
IMF総会が日本再評価のきっかけ>
 
これまで世界のマーケットに引きずられることが多かった日本市場だが、「安倍相場」がスタートして以降は逆に日本が世界を主導する展開になっている。
日本株が上昇を始めたのは、野田佳彦前首相が解散を明言した11月14日の翌日15日から。一方、米国株はワンテンポ遅れて16日から上昇基調に入った。欧州のFTSEユーロファースト300種指数.FTEU3はさらに遅れ19日を起点に上昇トレンドに入っている。市場では「米国の『財政の崖』など海外要因がその時点で明るい見通しになったわけではない。米財政問題は現在も不安要因だが、欧米株は上昇基調にある。珍しいことだが、日本市場が世界を引っ張っているといっていいだろう」(国内投信)との見方が多い。
 
日本が再注目されるようになったきっかけは、野田首相の解散宣言から1カ月以上前となる10月9─14日に48年ぶりに東京で開催された国際通貨基金IMF)・世界銀行の年次総会だったとみられている。政府や民間金融関係者など合わせて約2万人が東京を訪れたが、それまで日本市場に興味がなかったヘッジファンドなどはいい機会だとして、日本の情報を積極的に収集したという。
 
T&Dアセットマネジメント・チーフエコノミストの神谷尚志氏は「ヘッジファンドなどは、その際、近い将来、民主党から自民党への政権交代があり、それまでのあいまいな政策から、金融緩和と財政出動という明快な政策に変わると踏んで、日本株買いや円売りなどの投資を始めたようだ」と指摘。日銀の金融緩和で流動性が増加し、世界のリスク資産価格を押し上げるとのシナリオが崩れない限り、欧米株も堅調な展開を続けそうだとみている。
日経平均が本格的に上昇したのはIMF総会から1カ月以上経ってだが、ある外資系証券エコノミストは「日本を良く見ている海外投資家は野田首相の解散宣言よりずいぶん前から、新政権誕生以降までを描いたシナリオを作って投資していた」と話している。彼らは現在、様子見に入っているとみられているが、海外年金など日本株のウエートを落としていた長期投資家が日本株に買いを入れているという。
 
前場日経平均は続伸。東証1部売買代金は1兆0041億円と午前の段階で大台を超えた。あす決定される緊急経済対策、15日決定予定の2012年度補正予算などイベントを前に様子見気分も強くなっているが、引き続き日本株への需要は根強い。「海外勢の買いに個人が参戦するという構図は変わっていない。高値圏での戻り待ちの売りをこなしている状況だ。経済再生に向けて政府、日銀が歩調を合わせて取り組む姿勢を見せていることが市場に安心感を与えている」(岡三オンライン証券チーフストラテジストの伊藤嘉洋氏)という。

<債券市場でも「安倍相場」継続を警戒>
 
円債市場でも「安倍相場」継続への警戒感は続いている。午前の国債先物はアク抜け期待もあって小幅高となったが、市場では「円安・株高のリスクオン相場への警戒感から、海外勢の目線は依然として売り方向」(国内金融機関)との声も多く、売り買いが交錯する場面もあった。
 
日銀の金融緩和期待は10年債ゾーン程度までの金利を比較的低く抑え込んでいるが、国債増発懸念が強く反映される20年債、30年債の超長期ゾーンは上昇圧力がかかっている。この日実施された30年債入札も入札そのものに波乱はなかったが、市場では「やや弱め」(国内証券)との評価が多い。
 
また海外でもリスクオンが進むなかで、金利上昇圧力がかかっており、ドイツ証券・チーフ金利ストラテジストの山下周氏は「米10年債利回りは1.8%台というレンジの上限をいったん上抜けてきただけに、2.0─2.5%という新レンジにシフトすると予想している。米民間部門の経済指標の堅調さが米時間軸を不安定化させよう。米景気の上振れと国債増発に伴う需給懸念が長い年限の円金利上昇につながる」との見方を示している。
 
(ロイターニュース 伊賀大記;編集 宮崎亜巳)