3/4-8 週はボラタイル?

来週のドル/円は突如吹き荒れる「円買い戻し旋風」に注意
2013年 03月 1日 16:03 JST  
 [東京 1日 ロイター] 
 
 
 来週の外国為替市場では、中銀の政策関連イベントが目白押しで、週末には米雇用統計を控え神経質な展開が予想される。
 
 底流ではリスクオンムードが維持されるとの見方が多いものの、円相場とは無関係なきっかけで一気にリスクオフに傾き、円が急騰することは、イタリア総選挙で証明済みで、突然の吹き荒れる「円買い戻し旋風」に注意が必要となりそうだ。
 
 予想レンジはドル/円が91.00─94.00円、ユーロ/ドルが1.2800─1.3200ドル。
 
 この日は米歳出強制削減措置の発動期日だが、政府・与党と野党の溝は埋まっていない。国際通貨基金IMF)は強制削減が発動された場合、現在2%としている2013年の米成長見通しを少なくとも0.5%引き下げる方針を表明している。
 
 「市場はこれまでのところ安定しているが、なんらかのゴタゴタがあれば、リスクオフに傾く可能性がある」と三井住友信託銀行、マーケット・ストラテジストの瀬良礼子氏は予想する。
 
 
  <ファンド勢の苦境
 
外為市場では、昨年11月中旬からドルを買い続けてきた海外短期筋が、目下93―94円台で相当規模の不採算ポジションを抱えているとみられている。
 
 「しこり(不採算ポジション)の大きさを考えれば、ドルの上値追いは厳しくなっているようにみえる」(ファンドマネージャー)という。
 著名投資家のジョージ・ソロス氏が、円の下落を見込んだ取引を通じて昨年11月以降およそ10億ドルの利益を計上したことは記憶に新しい。
 
 しかし、大手ファンドが利食い終えた市場では、「ここから1、2円下がったら、破たんの危機にさらされるファンドが数多く存在する」(外銀)との指摘が出ている。最近は「損失を取り戻すために(ドルの)押し目を必死で拾うファンドの姿が目立つ」(同)という。
 
 しかし、G7の為替に関する緊急声明やG20の討議を経て、円売り戦略に固執するファンド勢は「(ドルを)買っても買っても上がらない状況に次第に追い込まれており、かなり浮き足立っている」(運用会社)との指摘が出ている。
 前週の外為市場では、円売りストラテジーのファンド勢を悪夢が襲った
 
 ドルは25日の日本時間早朝に94.77円と2010年5月以来の高値を付けたが、円相場とは無関係なイタリア総選挙をめぐる懸念を背景に、一昼夜でドルが4円下がり、26日の早朝には90.85円をつけた。その後92.75円まで買い戻されたが、半日後には再び91.11円まで振り落とされた。
 
 SMBC日興証券・金融経済調査部の為替ストラテジスト、野地慎氏は「リスクオフなら円高が意識されることが確認された」、さらに、中央銀行の大胆な金融緩和を背景に過剰流動性が渦巻くなか、ドル/円はリスクアセットの価格次第でいくらでも動く通貨ペアになったと同氏はいう。
 
      <中銀政策関連イベント>
 
 3月4日からの週は5日の豪中銀(RBA)理事会、6―7日に日銀金融政策決定会合及び英中銀の金融政策委員会(MPC)、7日にECB理事会、カナダ中銀の政策金利発表等、中銀政策関連のイベントが目白押しだ。
 
 「特に、ECBやBOEで緩和のニュアンスがどのように出てくるかに注目している。RBAもハト派的になっているので、今後の利下げについてどのようなスタンスを示すか関心が集まっている」とFXプライム取締役の上田眞理人氏はいう。同氏は、需給面では、ドル/円を手当てできていない実需勢は依然多く、円安の流れはなお続いていると分析する。
 
 ロイター調査によると、BOEが3月6―7日のMPCで資産買入れプログラムの規模を拡大する可能性が増しつつある。一方、RBAは5日の理事会で、2月の会合に続いて政策金利を3.00%に据え置くと公算が大きいとみられている。
 
 日銀に関しては、現体制で最後となる3月の会合では政策据え置きとみられているが、海外短期筋の間では、新体制が始動する4月3―4日の日銀決定会合で思い切った緩和策を発表するとの期待が根強い。
 
 為替市場では、日銀新体制が始動し始めるまでは緩和期待が続き、円安プレッシャーが大幅に後退することはないとの見方が聞かれるが、その後は、4月19日までの米予算案をめぐる交渉など、「テーマが日本から米国にシフトするのではないか」(瀬良氏)という。
 
       <雇用統計>
 8日には2月の米雇用統計が予定されている。「アメリカ景気の今後を占ううえで重要度が高い」(上田氏)とみられているが、1月に続いて穏やかな景気回復が続いていることを裏付ける結果となるのか関心が集まっている。
 
 米労働省が28日発表した2月23日終了週の新規失業保険週間申請件数は、季節調整済みで2万2000件減の34万4000件と、36万件を見込んでいた市場予想以上の減少となった。雇用市場の回復の勢いがいく分増していることを示唆している。 ただ、季節変動分の調整によるゆがみ背景に、新規失業保険申請件数はこのところ振れの激しい動きとなっており、雇用市場の実態把握が難しい状況にある。
 
 
(ロイターニュース 森 佳子)