シリア、高山正之氏の解説。

■シリア情勢の緊迫化や米国の債務上限の問題などが重なっており「短期的な調整は必至だろう」の声

とブルムバーグにあったが、先ごろ出た高山正之マッカーサー慰安婦がお好き」に関連することが載っていた。
初出は週刊新潮12.09.06号である。   かいつまんで紹介したい。


■ シリアで日本人女性記者が殺された理由

サダム・フセイン世俗主義バース党を立ち上げ、宗教を引っ込めて女を開放した。
女は喜んだが、シーア派の坊主は喜ばず、サダムに何度も暗殺をしかけた。

サダムはイスラムを引っ込めた代わりにアラブ民族主義を訴えた。
アラブ世界には世界の石油埋蔵量の1位から4位までが集まる。
米国はこれを憂慮して、ブッシュは白人優位の威信をかけてサダム退治に乗り出した。

最初は大量破壊兵器を言いたてたが、もちろんそんなものはなかった。
そこで、サダムはシーア派を粛清した残忍な独裁者だ「人道が許さない」と派兵した。
サダムはシーア派に引き渡され吊るされた。
米国は中東開明の士・サダムを矮小な宗教争いに見せかけて殺した。

今回のシリアのアサドも、サダムとおなじ世俗主義バース党政権の主である。
だからダマスクスの女は袋をかぶせられず、スークでは亭主以外と口もきけないはずの女が髪をかきあげながら店番をしている。
ダマスカスはキリスト教になじみ深い土地である。北郊のマルーラ村ではキリストがしゃべったアラム語を話している。
ダマスカスは歴史ある世俗の地だ。
教会下の売店では、売りモノのロザリオを首にかけたイスラム教徒がアラム語の聖書を売っている。


シリアはほどほどに石油も出て金もある。
サウジなどアラブ諸国とは兄弟関係にあり仇敵イスラエル封じ込めの功労者と認められている。
加えて人種の違うイランとは、イ・イ戦争の時に同盟を結んだ深い付き合いもある。
イ・イ戦争ではソ連イラクについたが、今はシリアに接近し地中海の港も貸し借りする仲だ。
アサドは偏屈サダムよりはるかに顔が広く人柄もいい。

ロシアともイランとも手を握れるアラブの新盟主など米国にとっては考えたくもないコトである。
かくてアサドつぶしが始まった。それが「アラブの春をシリアへ」だ。

サダムの時と同じように不満坊主を焚きつけようにも歴史的に世俗主義だから多数派のスンニ派さえ宗教政権には後ろ向きだ。
しかたなく、米国はCIA経由でトルコ側国境で反政府派外人部隊に「重火器や対戦車ミサイル、RPGなどを供給してきた」(20120612ヘラルド・トリビューン紙)と内戦を促進させた。
スンニ派の街をその反政府派が襲って「アサドはこんな残酷をやる」と見え透いた演出を繰り返しているが騒ぐのは事情を知らない日本のメディアだけだ。


シリアで「アラブの春」が始まって1年半も経つのに一向に埒が明かないのはシリアの民がアサド政権に期待しているからだ。
そうとも知らず日本人女性記者が反政府派とトルコ国境を越えた。
彼女をやれば「悪逆アサド」の手軽で効果的な宣伝になると通は考える。


http://www.sponichi.co.jp/society/news/2012/08/22/kiji/K20120822003951220.html