イメージを消費すること。

某日休日、梅田へ出かけた。
 
ナンだか知らないが、次女もついて来た。
梅田の地下街を歩きながら、何か食べるかと問うと、前に行った串カツがよいとの事。
こいつが幼稚園の時連れて行った立ち飲みヨネヤか?よく憶えてるな。
二十歳のむすめの行く所じゃないが…
 
と、よく聞いてみると、その少し先の「串カツ 活」に行きたいらしい。
ああお父さんはそういうお肉の切れっぱしに1万円以上払いたくないなあと悩むが、そう言えば2年ほど前に連れて来た時「おいしいのにもう食べられない、次はお腹を空かせてからくる!」と言っていたな。
 
あの時の恨みを晴らすつもりだな。
長女や三女が一緒だと3万円仕事になってしまう。
涙をのんで暖簾をくぐった。
 
串カツ「活」は揚げたての串カツが次々と並ぶエンドレス地獄形式の串カツ屋である。
10本も食べると飽きるのだが…次女に遠慮させても、遠慮するような人間ではないのはよく知っているが、万が一にも遠慮が芽生えて、もう一度来たい!遠慮なしに食べたい!などと怨念が残ってもいけないので、ホスト役の父も死力を尽くして喰う。
 
もういいだろうとおぼしい頃、お父さんはもういらないから、貴君はダメ押しを注文し給えと命じ
ダメ押し海老の姿揚げを食わせて、落着。
酒も飲まずに、1万5千円の油メシであった。
 
地価の本屋でマンガを買ってやる。
あいかわらずヲタ漫画か?まあ読めるうちに読んでおき給え。そのうち読めなくなるから。
そういうと、不思議そうな顔をするので、貴君が幼稚園の時に毎日読んでいた、あの「けろけろチャイム」
カエルの王子様とカエルの国に行く話、あれをいま読むのは辛いだろう?と言うと納得した。
 
夕方の阪急百貨店地下売場で家で待つ女房以下長女三女のために土産を買う。
帰宅してから次女が、お前だけいいモノ食わせてもらって許されると思っているのか!
と家族から吊るし上げられない用心である。
 
サーモンマリネ、焼き豚、とんかつ、寿司パック、等。なんちゅーかまあ、惣菜である。
ダメ押しに(ダメ押しするタイプなのである)ロールケーキも買い、出口へ向かう。
 
途中の和菓子コーナーで次女の足が止まった。
桃色や緑のまんじゅうを陶然と見ている。
 
ほしかったら買うが?と聞くと
「いりません、錬りきり ですから」とのこと。続けて
「しっとりと甘いだけで。高校の茶道部でもよく食べましたが、別に特においしいものでもないのです。」
へー、この子の何でもかんでも石でもクワガタの餌蜜でも喰う時代は過ぎたのだ。
 
「でも好きなんやろ、ほしければ買うよ」
うっかり次女を連れてきたばっかりに予定外の出費だった、毒を食らわば皿までの心である。
今日は幸せだった!しばらくは思い出すだけで満足!と。。。思って頂きたいのである。
思い出して喜ぶ段には、なんらお金はかからないのである。
 
「いりません、錬りきりを見れば夢がいっぱいの幸せな気分になるんですよ。味じゃないの。」
なるほどファンシーアイテムね。
「イメージを消費するってお父さんも言ってたでしょ?」
ああ、カニカニ旅行のチラシ。女房との話を覚えているのだ。
 
 
ずいぶん前だが新聞折り込みのカニ旅行チラシを見ながら、
私が「ああ、カニカニ天国!死ぬまでに一度行ってみたい!」と静かに泣いていると
「いったらええやん、私らはええから、泣いとらんと行ってきたら?」と女房。
2-3万円の金を惜しんで行きかねていると思っているのね?違うよバカ!
 
君ね、こんなチラシで山盛カニセット売って、大したカニが出せるわけないやろ。
冷凍カニの味も香りも抜けきったカブトムシより不味いカニですよ!
そんなのが喰いたいわけじゃないの!
 
私はカニカニ天国、美味しいカニ!のイメージを消費しているのであって喰う喰わないではないのである。
貴君のようにエサ話しか出来ない現物オンリーの人間と一緒にしないでくれ給え。
カニチラシの中においしいカニイメージを…その抒情を旅しているのである。
カニのイメージを消費しているのであって、カニを消費したいわけではない!
 
それ以降、冬に私がカニ広告のチラシを見て泣いていると
「イメージを消費している…」「泣いてる…」「カニなんか海の虫」などと陰口が聞こえたものである。
 
なんだか長いわりには話が散らかってしまりのない結尾になったが
イメージを消費する、という考え方は子供に伝えたかった。
 
相手のイメージを満たせ!
相手はお前の思うがままに動くから!
自分もまたイメージのプリズナーであることを自覚してほしい。
 
女なんだから、そこにいるだけで値打ちがなくてはいけない。
パフォーマンスで相手を納得させるのは男の仕事である。
 
不細工なオバはんのために、おっさんが一生懸命働いてこそ治まる御代である。
なんだか話が散らかり放題(笑)