ガンスリンガーガール

hemp_investmentさん、への返事でしたが、
長くなりましたので、こちらに書きます。
 
 
意を尽くせない部分は、また追記します。
 
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hemp_investmentさん、こんばんは。
 
私のコメントをコピーで使って頂けるなら光栄ですが…
物語背景は是非、ウイキペディアで。
http://ja.wikipedia.org/wiki/GUNSLINGER_GIRL

よくまとまってます。
 
 
先日、日経のコラムで、
哲学者・森岡正博氏が、ラッセルの5分前世界を書いていました。
 
ラッセルの投げかけは
「この世界の全てが、5分前に出来た。このテーゼを論理的に否定できない。」
というものです。
 
世界の全てが5分前に出来た。
昨日の記憶も去年の記憶も半世紀前の記憶も知っている歴史も
全て全て、つじつまを合わせて5分前に出来た。
コレを論理的に否定、論破しえない。

ということです。
 
森岡正博氏はこのテーゼにつづけて、
「これを3分1分5秒1秒と縮めていけば、世界はいま生成されたとしか言えない」
と結んでいました。
 
 
 
ガンスリンガーガールの主人の一人、ヘンリエッタには
その人工の体へ繰り返されるメンテナンスと洗脳で
徐々に味覚障害と、記憶障害が起こってきます。
 
仲間と過ごす午後のティータイム、おやつに甘さを感じなくなって来ている自分への不安。

幼い恋心を抱く自分の担当指導官とのクリスマスの思い出、
そして既に去年のクリスマスのプレゼントが思い出せなくなっている自分への恐怖。
 
 
ガンスリンガーガールの登場人物たちの人生は
ラッセルの5分ほど虚無的ではありませんが

世界の全てが、いま立ちあがって来ている、、、というより
不幸な過去の記憶からも、一人の女性としての幸せな未来からも切り離されて
いま、ここにだけ、いまのこの人間関係の中にだけあるものです
 
肉体改造の強烈な負荷で自分たちが2-3年しか生きられないことを
淡々と、受け入れる一方で、
自分がなにものでもないことに、苦しみます
 
指導担当菅への忠誠と思慕も洗脳なら
ミッションへの執念も洗脳です
しかしそれを受け入れざるを得ません

作られた恋心も忠誠も、止みがたく、心に現れる、リアル
そして、自分のために、犠牲をいとわない担当官の行為もリアルなのです。
 
体や心や経歴に傷を得て対テロ組織で巡り合った、登場人物たちは
支えのない、たましいだけのような姿になって
かりそめの関係の中に自分のミッションを探します
 
人生の物語は実在せず、
過去は取り返せず
未来はそのゴールを示さず
いまだけの、毎日が、ミッションとして立ち現われてくるだけです
 
虚構を交えた現代イタリアを舞台に、敵対するテロ組織も
多くの市民協力者をもつ政治団体として描かれています
つまり、国内政治闘争の中で、殺し殺された、恨みがテロを生みだすという
終わりのない悪夢のような社会状況です
 
第1巻の主人公はヘンリエッタですが
 
指導官を失い浮遊するクラリス
自我とミッションに苦しみのり越えようとするトリエラ、
登場した時から傷痍軍人のアンジェリカ…
それぞれのドラマが連作的に語られます。
 
私は、通低音としてのリコが好きです。
元・全身麻痺で、いつも上機嫌で、
キツイ担当官に殴られてもけろっとしていて
 
いまいいる自分、「この動くからだ」に素直に喜ぶリコの姿に
思うところはたくさんあります。
 
 
相場のことなど考えながら、時々、読んでいます。