紅の豚  ユディト・ジーナ

宮崎駿の「紅の豚」、DVDを繰り返し見ているが、もう真っ赤にほの甘く左である。たぶん民青系。。。
「豚」のストーリー自体は軽いが、人物造形が微に入り監督の時代理解を反映していて面白い。

ホテル・アドリアーノジーナが「さくらんぼの実のる頃」を歌う時の表情とアングルが、クリムトの「ユーディト」のパロディである。
敵将の首を切り落として陶然とほほ笑むユディト。(笑)

後半、ジーナが書斎で空軍の無線を暗号表もなく数字で書きとめるシーンと照らすと歳月が豚のむかしの想い人をどんな女に変えたかわかる。
それだけに、豚がフィオの飛行艇でホテルのプライベートな庭のまわりを旋回するシーンで、まいにちジーナがなにを思い出していたか後からわかって涙を誘う。


順序が逆になったが
ジーナの「さくらんぼの実る頃」をバックに赤い飛行機の豚が飛ぶ。
背景の雲の低くたなびく黄昏の空は煉獄の空である。
煉獄の空から、赤い飛行機は暮色に染まる地獄のホテル、アドリアーノに降下していく。左に旋回しながら。(笑)

地獄のホテル・アドリアノは偽りの楽園である。三人とも亭主を死なせた死神ジーナはそこのマダムだ。
歌い終わって客席の空賊の親分連中に挨拶をするシーンにもジーナの属性は現れている。

空賊に微笑みかけながら威嚇するジーナの目。
照れながらしおらしく振る舞う空賊ども「この店の50キロ以内じゃ商売はしねえさ(へつらい笑)」。
ジーナが空軍の女であることを知っているのだ。


眠くなってきたのでここらでヤメるが、「紅の豚」は買ってよかった。非常に緻密に作られている。
フィオを時間をかけて彫琢してゆく話もまた書こう。