「東京五輪の裏金記事」 と増税 ②
■ つづき
窮地に陥る政治家もいるのだろう
「先生をお守りしろ!」 で論功行賞の材料にするのあろうなー (笑)
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資本関係も人事交流もないビジネスの委託先。この「関係のなさ」にスポーツ利権のカラクリがある。
単なる取引先だから、そこが何をしているか知らない。機能は子会社だが、関係のないよその会社だ。ディアク父子にとってタン氏が窓口となって「絶縁体」の役を果たしているのと同じだ。
「タン氏はAMSにコンサルとして雇われていたか」という問いに電通広報は、
「AMS社とタン氏の関係についてはお答えする立場にありません。当社がタン氏をコンサルタントとして雇ったり、ビジネス上の取引をしたりしたことはありません」
AMSとタンの関係は否定しなかった。電通と「無関係」を強調したのである。
電通とディアク父子は、AMS・タンという緩衝材を挟んでつながっていた。
腐敗があるからビジネスにうま味がある。問題はリスクの遮断。危ない橋を渡るには周到な遮断装置が必要になる。
タン氏は集金窓口であっても、職務権限はない。カネを受け取っても「コンサルタント料」と言い訳して逃げる。カネがディアク父子に渡った証拠がなければ汚職は立件できない。フランス検察はパパ・マッサタ氏とタン氏の二人を国際指名手配した。
不透明な資金はタン氏ルート以外にも開催地決定にカネが動く現実
気になるカネの流れはまだある。招致委がコンサルに払った金額はタン氏ルートの2億3000万円だけではない。総額7億円を上回るが、具体的な使途は明らかにされていない。「票固め」に使ったカネは他にもあるのではないか。
もう一つは「不可解な寄付」。今年1月、世界反ドーピング機関(WADA)の独立委員会がまとめた報告書にこんな記載がある。
「トルコは、国際陸連の大会に400~500万ドルの寄付をしなかったことでディアク会長の支持を失った。寄付を行った日本が開催の栄誉を得た」
形を変えた「買収」ではないか。トルコは寄付を「できない」と拒否し、敗退した。日本はどこからこのカネを捻出したのか。フランス検察が動いているだろう。
「開催計画の優劣や理念などを競う清廉潔白な争いで、成否は決まらない。約18年、五輪招致レースを取材してきた実感だ」
現実はそうかもしれない。2億円で得票が固まるなら安いもの、と招致に当たる人たちは考えたかもしれない。
大きな経済効果、世界に向けた宣伝、開催地の誇り、政権の達成感。諸々の効果を考えれば、多少の不透明なカネには目を瞑るのが大人の対応、という声もある。
不透明な支払いは誰が決めたのか。要求され、断れば票が逃げるかもしれない。招致委の責任者には「NO」の選択はなかっただろう。東京開催に泥を塗る決断は、ごく一握りの関係者でなされたのか。
「大人の対応」で許される?東京五輪の姿はこれでいいのか
事件が、ドーピング捜査から発覚したのは皮肉である。選手は誰しも勝ちたい。だが薬を使ったら失格。永久追放になるかもしれない。開催地の招致も競争だ。「不透明なカネ」はドーピングと同じではないか。
選手は厳罰、招致団体は「大人の対応」で許されるのか。
オリンピックは大きくなりすぎた。何のためにやるのか? 誰のための大会?
オレのため、カネのため、という輩が群がり、鼻先にぶら下がる私利私欲が推進力になっていないか。
東京五輪組織委員会は名誉会長が御手洗冨士夫・キヤノン会長。二代前の経団連会長だ。カネをたくさん出せる人が名誉会長になる。民間企業の最高位だ。トヨタ自動車の豊田章夫社長は副会長だったが、昨年12月、理由を告げず辞任した。汚れた五輪とは付き合いきれない、ということか。
御手洗氏は五輪に何を期待しているのか。名誉会長ということは国際陸連への寄付も奮発したに違いない。大丈夫なのか。
開催地・東京の知事は組織委に加わってはいない。開催地の知事より五輪を仕切りたい元首相が幅を利かすという不思議。文科大臣も五輪担当相も子分を当てがっている。これが東京五輪の姿だ。
五輪は東京に必要なのか。もう一度考えたい。
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