文庫本  「不愉快なことには理由がある」 橘玲

■    「原発と野生動物」     102ページ から


南アフリカの動物保護区にはかつてはたくさんの 「豹」がいたが、いまはもう絶滅した。


ヘミングウエイの 「キリマンジャロの雪」にあるように、古くからアフリカには多くの白人ハンターがやってきた
彼らにとって、大型肉食獣のハンティングは最高の 「勲章」だった。

ハンターたちが雇う 地元のガイドは、ふだんは農民で牛や羊を飼って暮らしていた。
家畜は 「豹」の被害に遭ったが、それは仕方のないことだと思っていた。

また、白人ハンターが、「害獣=豹」のハンティングに成功すると多額のボーナスをくれるのは
非常にありがたい事だった。


ところが、英国やアメリカで動物愛護運動が盛り上がると、アフリカでハントした毛皮や剥製を本国に持ち帰ることが違法になった。
さらにサファリ (アフリカでの狩猟)は植民地主義の象徴となり、不道徳とみなされるようになった。



こうして、ハンターがやってこなくなると、現地住民にとってながらく共存してきた豹もライオンもただの家畜を襲う害獣、ということになった。
現地の住民は、生活と家族を守るため、大切な家畜を襲う 「害獣」の駆除にのりだし、徹底的に進め、豹はオスもメスも子供も赤ん坊もすべて殺しつくされ、いなくなった。



頭数を管理しながらハンティング料金を引き上げて、地元経済を潤し、また、動物を傷つけないエコ・ツーリズムを宣伝して別の環境客を集めるなど、いまから振り返ればほかにやり方はあったはずだが、「営利のためにアフリカの動物たちが欧州人に無慈悲に殺されている」点を告発する、「動物愛護を真剣に考える人たち」には、そういう考えは受け入れられなかった。



エコロジーの理想を追求する人々の理想は、そのまま実現されることを追及され、、全ての「豹」はいなくなった。




いま言われている
「すべての原発を即座に永久に廃棄せよ」 という主張について

同じく、考えるべき点はあるのではないか。





かいつまんで書いたが、原文はもっと読みやすい。

2011年ころに書かれた文章である。 話題は古いが、論点は古びていない。 面白い。


「税金を払わないのには進化論的な理由がある」
「高校生のセックス相関図」
「音楽家になれるかどうかは親を見ればわかる」
参議院は廃止したらどうだろう」


科学的に証明されたが、ウケが悪いので人口に膾炙していない話題を集めた本である。

「科学的」 というのは反証可能性を留保した言説のことである。
いろいろな、反証を考えながら読むと面白いのではないかと思う。


先週、本屋の新刊棚で見つけて、すこしづつ読んでいる。

「書斎の本棚」 じゃなくて、ダイニングのテーブルに積んでる本から、、とすべきだったな。 (笑)